みかんを食べた。おばあちゃん家を思い出す。平屋。お風呂のお湯を沸かすのに薪を使った。冷蔵庫にはいつも麦茶があった。冷蔵庫の横にジュースが段ボールに入っていた。オニヤンマが飛んでいた。甲子園が映っていた。ピアノが置いてあった。犬がいた。本がたくさんある誰も入らない埃っぽい部屋があった。墓参りの記憶はあまりない。ゲームボーイに熱中していた。トイレはいつしか洋式になった。コタツで紅白歌合戦を見ながらおばあちゃんの芸能人に対する文句を聞いた。風呂が沸いたら順番に入った。出たらジュースを飲んでみかんを食べた。おじいちゃんはどこにいて何を考えていたのだろうか。母の青春を過ごした思い出も知ることはなかった。私はみかんは好きではなかった。時間が経つのは早い。知り合いの多くは父親になり誰かの実家になる。私は